カスタマーハラスメント対応マニュアルの作り方|5つのステップと企業事例

人事・労務

カスタマーサポートや窓口業務で増加する“カスハラ”にどう立ち向かうか?
その答えのひとつが、社内での明確なマニュアル整備です。
本記事では、厚生労働省のガイドラインを軸に、実際に企業が導入している対応マニュアルの構成と作成ステップを解説。
あなたの会社に合ったオリジナルマニュアルの作成に役立つヒントが詰まっています。

【第1章】カスタマーハラスメントとは何か?

厚生労働省による定義とガイドラインの要点

まず「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」とは何か。
厚生労働省が2022年に公表したガイドラインでは、カスハラを「顧客等からの著しい迷惑行為」と明記しています。

具体的には、業務の適正な範囲を超えた言動により、労働者に精神的または身体的苦痛を与える行為や、就業環境を悪化させる行為が対象となります。
このガイドラインは、企業がカスハラに対して適切に対応できるよう「体制整備」「事前対策」「事後対応」の三本柱を軸に、明文化されています。

特にポイントなのは、対応義務が「企業側」にあるということ。
従業員個人が耐える問題ではなく、組織として“守る姿勢”が求められているわけです。

「お客様第一」が裏目に出る時代、組織の転換期ですね。

クレームとの違い|正当な苦情とハラスメントの境界線

カスハラと“正当なクレーム”の違いをあいまいにしてしまうと、現場が混乱します。
ここで重要なのは、「伝え方」と「態度」です。

たとえば、製品に不備があったことを冷静に指摘するのは当然の権利。
しかし、声を荒げて罵倒したり、長時間にわたって謝罪を強要する行為は、業務の範囲を逸脱しています。

この境界線を明確にし、社員に共有しておくことは、企業にとっての“自衛策”でもあります。

曖昧な線引きが、現場の判断を鈍らせてしまうんです。

よくあるカスハラの具体例

現場で実際に起きているカスハラの例には、以下のようなものがあります。

  • 電話で怒鳴り続け、1時間以上話を切らせない

  • レジで他の客の前で「バカ」「死ね」といった暴言を吐く

  • 謝罪を動画で撮影し、SNSにアップすると脅す

  • 担当者の個人情報を探り、私生活への干渉を試みる

こうしたケースは、従業員のメンタルに深刻なダメージを与え、離職につながる原因になります。
特に近年は「SNS拡散型カスハラ」のように、企業の評判を盾にしてくるパターンも目立っています。

業種別に多発するカスハラの傾向

カスハラが多発する業種には、ある傾向があります。
とくに以下のような「対人対応」が日常的な業種で多く見られます。

小売業

レジスタッフへの暴言や土下座要求が頻発。
客観的に見ても過剰な謝罪要求が問題視されています。

医療・介護業界

スタッフの判断や処置に不満を持った利用者・家族からの威圧的言動が見られます。
命に関わる場面だからこそ、理性を欠いた対応になりやすい特徴も。

コールセンター・カスタマーサポート

顔が見えない分、過激になりやすいのがこの業界の特徴です。
録音対応が常態化している背景には、これらのトラブルリスクがあります。

また、業界問わず「感情労働」を担う職場では、マニュアル化されていない“対応の限界”に日々直面しているのが実情です。

本章では、カスタマーハラスメントの定義と現場での実態、そしてクレームとの境界線について整理しました。
次章では、「マニュアル作成前にやるべき準備」について、さらに具体的な実務面からお話しします。

【第2章】マニュアル作成前にやるべき準備とは?

現場の実態把握がスタートライン

カスタマーハラスメント対策を進めるにあたって、「マニュアル作成」から入ってしまう企業は少なくありません。
ですが、形だけの対応では現場には浸透せず、かえって形骸化のリスクが高まります。

まずやるべきは、自社の“今の課題”を正確に把握することです。
たとえば、以下のような手法が有効です。

  • 現場ヒアリング(カスタマー対応部門やフロントライン)

  • 匿名アンケート(恐怖や遠慮なく本音を出してもらう)

  • 直近のクレーム・インシデント記録の分析

これにより、「どのようなハラスメントが実際に起きているのか」「どこが対応のボトルネックになっているのか」が見えてきます。

現場を見ずに作るマニュアルは、まず使われませんよ。

他社マニュアル・厚労省の雛形をリサーチする

ゼロから完璧なマニュアルを作る必要はありません。
厚生労働省が公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」は、構成や対応方針の参考として非常に実用的です。

また、株式会社ヌーラボや株式会社エス・ピー・ネットワークなど、民間企業が公開している事例・方針テンプレートもあります。
これらを参考にしつつ、「自社らしさ」「業界特性」「組織規模」に合う形にカスタマイズしていくのが現実的です。

型をうまく使って“自社化”するのがポイントです。

経営陣・法務・コンプラ部門との連携を確認する

マニュアルは「現場向け資料」ではなく、組織全体の指針です。
そのため、作成フェーズから経営層や法務・コンプライアンス部門の巻き込みが不可欠です。

たとえば、以下のような確認・合意が求められます。

  • 「どこまでをハラスメントとして認定するか」基準の共有

  • 対応時に“会社が社員を守る”という姿勢の明文化

  • 記録・報告・エスカレーション体制の法的妥当性

特に法務の視点が抜けると、マニュアルに記載したルールが労働契約や個人情報保護法に抵触するケースもあるため、必ず連携しておきたいところです。

一次対応者の心理的・実務的負担を理解する

現場でカスハラに最前線で接するのは、若手社員や契約スタッフであることも多く、「どう対応すればいいかわからない」という声が頻出します。
それだけでなく、一次対応をしているスタッフの中には「過剰に我慢してしまう」人もおり、精神的なダメージが蓄積しているケースも珍しくありません。

ここで重要なのは、「一次対応は最小限でよい」「早期に上司や専門部署へつなげる」という認識を全体で共有することです。

マニュアル作成時には、こうした心理的なハードルや実務上の混乱を事前に洗い出し、現場目線の設計をすることが成功のカギになります。

第2章では、マニュアル作成前にやっておくべき「現場の声の収集」や「組織内の連携準備」について解説しました。
次章では、実際にどうマニュアルを構築するか、そのステップを解説していきます。

【第3章】対応マニュアルの構成例と作成ステップ

現場が使えるマニュアルには「型」がある

カスタマーハラスメント(以下カスハラ)対応マニュアルの目的は、「現場が迷わず、安心して対応できる」仕組みを作ることです。
そのためには、感情論や精神論ではなく、誰が読んでも理解できる“構造化された内容”にする必要があります。

まずは、マニュアルの基本構成から押さえましょう。

■マニュアルの基本構成

以下の4項目を中心に整理すると、機能するマニュアルになります。

  1. 目的・基本方針
    →「なぜ対応マニュアルを整備するのか」「従業員をどう守るのか」を明記。

  2. 用語の定義
    →「カスタマーハラスメントとは何か」「正当なクレームとの違い」を説明。

  3. 対応フロー
    → 初期対応からエスカレーション、記録・報告、対応後のフォローまでを図解。

  4. 記録様式・テンプレート
    → 対応履歴の記録や相談票の書式を統一。証跡を残しやすくする。

現場で迷わないためには、“フロー図”が欠かせません。

5つの作成ステップ

続いて、具体的な作成プロセスです。以下のステップで進めると、スムーズに全社導入につながります。

① 対応方針の策定

まず、「我が社はカスハラから従業員を守る」という経営の意思を明文化します。
この方針がなければ、現場は“自分だけが矢面に立たされる”と感じて萎縮します。

厚労省のマニュアルや、株式会社ヌーラボの対応方針例を参考にすると、「誰を守るか」「どんな行為を許さないか」が明確になり、現場との信頼形成にもつながります。

② 類型ごとの対応ルール作成

暴言・人格否定・長時間拘束・SNSでの晒し行為など、よくあるカスハラ行為を類型化し、パターンごとの対応例を明示します。

ここで大切なのは、「このケースではこう対応する」「このラインを越えたらエスカレーションする」といった線引きを具体的にすることです。

“グレーゾーンの指針”があるだけで、現場は救われます。

③ エスカレーションフローの整理

一次対応者がすぐに上司や専門部署へつなげられるよう、フロー図や連絡体制を明示します。
ここでは以下の要素を含めると、より実用的になります。

  • 緊急/非緊急の見極め

  • エスカレーション先(部署・役職)

  • 上司が不在の際の対応代替案

④ 記録シート・報告様式の整備

すべての対応は、記録に残すことが基本です。
言った・言わないの水掛け論を避け、対応履歴を一元管理するために、統一様式の記録シートや相談票を用意しましょう。

記録の書き方についても「具体的な発言内容」「感情的な言い回しを避ける」などの注意書きがあるとベストです。

⑤ 周知・研修計画の策定

せっかくマニュアルを作っても、「知らなかった」「見てない」では意味がありません。
そのため、定期的な研修・eラーニング・ロールプレイなどを通じて、全社的に周知徹底する必要があります。

特に、管理職には「部下を守る義務」があることを理解してもらい、マネジメントとしての役割も伝えましょう。

参考:株式会社ヌーラボの対応方針テンプレート

ヌーラボ社が公開している「カスタマーハラスメント対応方針」は、実際に社内外へ向けて明文化された好例です。
テンプレートには、以下のようなポイントが含まれています。

  • ハラスメントの定義と言及

  • 担当者が安心して対応できる体制の確保

  • 社員・チームを守る企業姿勢の明示

特に、「感情的に対応せず、エスカレーションすることを推奨する」部分は、実務で非常に有効です。
このような方針を公開することで、企業姿勢を社外にも伝えることができ、クレーマーの抑止力にもなります。

次章では、完成したマニュアルを“使える仕組み”にするための【社内展開と教育体制】について掘り下げていきます。
作って終わりではない、マニュアル活用のリアルに踏み込んでいきましょう。

【第4章】現場で使えるマニュアルにする工夫

紙のマニュアルは「作って終わり」では機能しない

カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策マニュアルを作成しても、現場で活用されなければ意味がありません
むしろ、作って満足してしまうと「対応に差が出る」「機能しない」「逆に混乱を生む」という逆効果にもなりかねません。

この章では、マニュアルを現場で“使える”仕組みに変えるための工夫と運用設計を解説します。

「紙のマニュアル」で終わらせない運用設計

多くの企業でありがちなのが、PDFファイルを共有フォルダに置いて満足してしまうパターンです。
これでは、忙しい現場のスタッフが必要なときに確認できず、実務に落とし込まれません。

そのため、次のような運用設計が欠かせません。

  • 社内ポータル・チャットツールへのリンク常設

  • 印刷版マニュアルをバックオフィス・対応ブースに配置

  • よくある質問(FAQ)や簡易チャートを添付

どこに何があるか分からないマニュアルは、無いのと同じですね。

現場教育との連動:eラーニング・OJT・ロールプレイ研修

マニュアルを生かすには、「実践的な教育」とセットで運用することが必須です。
おすすめは以下の3段階アプローチです。

  1. eラーニングで基礎知識を全社員に周知
    → 全体像や方針を短時間で学べる形式が効果的。

  2. OJTでマニュアルの使い方を日常業務に組み込む
    → 現場リーダーがトラブル発生時の初動をレクチャー。

  3. ロールプレイ研修で“声に出して”体験する
    → 実際の対応を演じてみることで、理解度が格段に上がります。

ロープレは恥ずかしさを越えた瞬間に、記憶に定着します。

マニュアルに記載すべき禁止例・対応例(テンプレ紹介)

厚生労働省のマニュアルを参考に、カスハラの禁止行為と対応例をテンプレート化しておくと、理解が一気に進みます。

<禁止行為の例>

  • 暴言・人格否定・業務外の私的要求

  • 長時間にわたる拘束・執拗な電話やメール

  • SNSでの誹謗中傷や不買運動の呼びかけ

<推奨される対応例>

  • 「そのご指摘は○○部門にて承ります」と冷静に線引き

  • エスカレーションの判断基準と相談先をマニュアル化

  • 対応後の振り返り記録とフィードバックの共有体制

特に大事なのは、「怒られても耐えることが正解ではない」と伝える姿勢を会社として明文化することです。

記録の徹底と二次被害の防止(フォロー体制の重要性)

現場スタッフがカスハラに対応した後、もっとも危険なのは二次被害です。
「上司に報告しても何もしてくれなかった」「自分だけ責められた」といった失望体験は、離職やメンタル不調につながります。

このリスクを防ぐために、以下の体制を構築してください。

  • 記録・報告が義務であると周知する

  • 報告後、上長・人事が必ずフィードバックを行う

  • 精神的ケア(産業医や社内カウンセラーの活用)

  • 同様のトラブルが再発しないための再研修・見直し

「報告してよかった」と思わせるプロセスがなければ、マニュアルは形骸化します。

まとめ

マニュアルは、あくまで“スタート地点”です。
実際に使われてこそ価値がある。そのために、現場での定着・教育・記録・フォロー体制までが一体化されている必要があります。

次章では、企業の実例をもとに「成功するカスハラ対策」の仕組みを紹介します。
「結局、どこがうまくいっているのか?」が気になる方は必見です。

【第5章】対応ルールが浸透している企業の事例

「マニュアルを作っても、現場に浸透しない」。
カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策に取り組む企業が最初にぶつかる壁です。
しかし一方で、実際に“うまく運用されている”企業も存在します。

この章では、業種別の成功事例と、対応ルールが機能する企業に共通する“ある工夫”をご紹介します。

小売業A社|「種類別対応カード」で即対応を可能に

全国に店舗を展開するA社では、店頭スタッフの対応のばらつきが長年の課題でした。
ある店舗では毅然と対応できても、別の店舗では「すぐ謝る」「上司に丸投げする」など、反応がまちまちだったのです。

そこで導入されたのが、「苦情の種類別対応カード」

  • クレームの6分類(商品不満、接客不満、理不尽要求 など)

  • 各分類に対する初期対応フレーズ例

  • エスカレーションの目安と報告ルート

カードはレジ横の見えない位置に置かれ、どのスタッフでも対応を始められる工夫がされています。

属人的な判断から、「全社共通の言葉」に落とし込んだのが秀逸ですね。

医療業B法人|メンタルヘルス部門と連携した安心設計

医療法人Bでは、受付スタッフへの患者・家族からの言動ストレスが慢性的な課題となっていました。

導入されたのは、メンタルヘルスケア部門と連携したカスハラ対応スキームです。

  • 現場対応のマニュアル整備(厚労省テンプレをカスタマイズ)

  • ストレス度に応じたケアフロー(即時報告→休養→産業医面談)

  • モニタリングによる再発防止策(対応後の振り返りミーティング)

この法人では、“守られている感覚”が職場満足度を高める要因となっています。

「1人で抱えなくていい」体制が、離職防止にも効いているようです。

IT企業C社|チャットハラスメントに明文化で対処

リモートワークを中心とするIT企業C社では、SlackやZoomなど非対面のコミュニケーションでのハラスメントが新たな課題でした。

この会社では、チャット上のカスハラも「明文化」して対処しています。

  • 社内外でのメッセージや投稿も“対応対象”に含む

  • 特定の絵文字連打、過度な引用返信、圧迫口調のNG表現一覧

  • 非言語圧力(既読スルー・無視)に対する相談ルート整備

リモート環境下でも、“見えない攻撃”への感度を高めています。

成功企業に共通する要素:「迷いを減らす設計」

これらの企業に共通するキーワードは、「迷わない」ということです。

  • どう対応すればいいか、迷わない

  • どこに報告すればいいか、迷わない

  • どこまでが正当で、どこからがNGか、迷わない

つまり、「判断の負荷をマニュアルと仕組みで軽減している」のです。

これは単に“教育を徹底している”だけではなく、現場視点で作られた運用設計の成果と言えます。

まとめ

対応ルールを浸透させるには、「現場で実行可能な仕組み」を構築することが最優先です。
そのためには、「何が起きたか」ではなく、「どう対応すればいいか」にフォーカスしたマニュアルが求められます。

次章では、実際の現場でルールを定着させるために不可欠な“社内教育”と“体制構築”のポイントを解説していきます。

【第6章】マニュアル運用を成功に導くポイント

カスタマーハラスメント対策マニュアルは「作って終わり」ではありません。
真に機能させるには、運用フェーズこそが肝心です。
この章では、現場と組織が動き続ける仕組みの整え方について解説します。

管理職の理解がカギ|教育と支援のW設計

対応マニュアルがあっても、現場を指揮する管理職が理解していなければ機能しません。
まず重要なのは、管理職自身が“判断基準”を持つことです。

  • マニュアルをもとにした階層別研修

  • ロールプレイ形式での対応力強化

  • 「相談されたとき、どう返すか」の支援ガイド

これらにより、現場スタッフの安心感と上司の自信を同時に支える仕組みが生まれます。

現場よりも管理職側が“迷う”ケース、実はかなり多いです。

専門家とつながる|社労士・弁護士の活用術

法的リスクを回避しつつ、従業員を守るには、外部の専門家との連携が有効です。

  • 顧問社労士に定期的な制度レビューを依頼

  • 弁護士との契約で「法的助言窓口」を設置

  • 契約時に“労働問題・苦情対応の守備範囲”を明文化

特に対応の「グレーゾーン」においては、法的裏付けがあるだけで判断が明確になります。

経営層が不安に感じるのは「訴訟リスク」なんですよね。ここを見える化すると動きます。

第三者相談窓口の設置と匿名性の確保

「内部相談しづらい」という声はどの組織でも起こりえます。
そこで有効なのが、外部第三者機関による相談窓口です。

  • 社外相談窓口(委託型)で匿名性を担保

  • LINEやフォームでの“気軽に相談できる仕組み”

  • 定期レポートで内容を集計・傾向を把握

こうした体制により、声を拾いやすい環境が整い、問題の早期発見につながります。

「精神的苦痛」への早期介入と記録の徹底

カスハラが発生した場合、従業員の精神的ダメージを見逃さないことが重要です。
対応マニュアルでは以下の点も明記すべきです。

  • ストレスチェックや医師面談の基準とフロー

  • 「対応後に症状が出た場合」のフォロー方法

  • 精神的苦痛の申告時に行う記録内容(時間・内容・反応・証人など)

これは、万が一の訴訟や労災申請の際にも、会社としての適切対応を証明する材料になります。

継続は力なり|専門家のセミナーや継続支援

「一度研修をしたら終わり」では、対応力は育ちません。
カスハラ対策は継続的な学びの機会の提供が求められます。

  • 半期ごとのオンラインセミナー開催

  • eラーニングの定着チェック

  • 専門家との月1レビュー会議の導入

これにより、「忘れない・ぶれない・相談しやすい」体制が築かれます。
また、従業員側も“会社は守ってくれる”という信頼感を持ちやすくなります。

まとめ

マニュアルは“紙のツール”ですが、それを活かすのは「人」と「体制」です。
管理職、相談先、記録体制、フォローアップ。
この4つの柱が揃って初めて、カスハラ対応は組織の文化として根づいていきます。

次章では、すでにこれらの取り組みが定着している企業の事例と共通点を、より具体的にご紹介します。

【第7章】まとめと感想|“使える”マニュアルが職場を守る

カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)は、現代の職場環境において見過ごせない課題です。
本記事では、対応マニュアルの作成から運用までの具体的なステップを整理し、成功企業の事例や現場で活かす工夫をご紹介してきました。
最後に、要点の振り返りと“今からできる3つの行動”を提示し、実践への一歩を後押しします。

本記事の要点整理

1章では、厚生労働省の定義をもとに、カスハラの基本概念と正当な苦情との違いを明らかにしました。
2章では、マニュアル作成前の準備として現場の声・経営陣の合意形成・参考資料の収集が重要であることを解説。
3章では、マニュアルの構成と5つの作成ステップを丁寧に分解し、テンプレート活用の実例にも触れました。
4章では、現場で“使える”マニュアルに落とし込む方法として、教育設計や記録の工夫について解説。
5章と6章では、実際に運用されている企業の事例や成功の要因、そして運用を続けていくための支援体制の整え方を詳述しました。

このテーマ、制度設計より“文化設計”の方が難しいんです。

今すぐ取り組むべき3つの行動

① 厚労省テンプレートをベースに自社の骨格案を作る

まずは「ゼロから作ろう」としないこと。
厚生労働省のカスハラ対策マニュアルや雛形をダウンロードし、自社に当てはめる形でたたき台を作ることが最短ルートです。
明文化が始まるだけで、現場の安心感は格段に上がります。

② 管理職・CS現場の実態調査を実施する

いくら良いマニュアルがあっても、現場の実態に即していなければ意味がありません
ヒアリング、無記名アンケート、1on1面談などを通じて、現場の不安や過去のトラブル事例を集めましょう。
それが、実効性あるマニュアルの土台になります。

“現場が本当に困ってること”を拾わないと形骸化しますよ。

③ 最初の一歩は「マニュアルより先に方針宣言」を出す

時間がなくてマニュアル作成が進まない場合でも、経営陣からの“方針宣言”だけでも先に出すべきです。
「カスハラは断固として許容しない」「従業員を守るための体制を整える」と明確にメッセージを出すことが、現場の心理的安全性の第一歩です。

最後に|対策が“企業文化”になるまで続ける

カスタマーハラスメント対策は、一度作って終わりではなく、文化として根づくまで“育てる”ものです。
最初はチェックリスト一枚かもしれません。
けれど、それがやがて「判断軸」になり、従業員が安心して働ける環境そのものを形づくっていきます。

マニュアルは“盾”であり、“地図”でもあります。
そして企業にとっては、社会的責任を果たす象徴的なツールでもあるのです。

この記事が、皆さんの取り組みを前進させる一助になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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